2012年12月29日土曜日

カーネギー協会編「デジタル時代の人間関係の原則 人を動かす2」、創元社

競争原理の次の時代が人間関係ベースの時代に戻ることをイメージさせてくれた本である。人とは争うのではなく、自分から低姿勢で相手の立場に立って接するという、もともと日本人の持っていた優しさを思い出させてくれる本だった。
そうだよね、僕たちはこういう価値観を持っていたよね。いつの間にか、アメリカのぎすぎすした競争原理が当然であるかのように仕立て上げられてきたけども、もう至る所で破綻しているではないか。それをまたアメリカ人から教えてもらって思い出すのもおかしな話だけど、我々間違っていないと思う。ただ、いつもそういう気持ちが持ち続けられるのかどうか、自信はない。今の日本人の気持ちはこれとは反対の方に行っている。

2012年12月15日土曜日

木村忠正「デジタルネイティブの時代」平凡社新書

この本は、研究者によるものである。木村氏は、生まれた年によって、次の4つに分類している。
~1982年生まれ デジタルネイティブ第1世代
1983~87年  デジタルネイティブ第2世代
1988~90年  デジタルネイティブ第3世代
1991~  デジタルネイティブ第4世代
この分類で行くと、いまの学生は第3~4世代である。著者によると、これらの分類によって、ネットの使い方が異なるということらしい。ひいては、第4世代となると、空気を読む、テンションの共有、つぶやいて絡む、社会に対する低い信頼感などの特徴を持つようである。

特徴づけるのは結構であるが、デジタル世界が生活の様式すべてをそこまで本当に決定するのであれば、第1世代以前の我々とは価値観が共有できないのではないかと感じた。我々は、デジタル機器は便利な道具として使うが、それはあくまでも補助的なものと考えている。真のコミュニケーションは、会って行わないとできないと思っている。私は、
>空気を読む、テンションの共有、つぶやいて絡む、社会に対する低い信頼感
に対しては肯定できない。いうべきことはどんな空気の中でも言うべきである。そして、言いたいことはつぶやくのではなく、きちんと整理して自分の正式な発言を行い、それ以外をぽろぽろとこぼしながら生きることはしない、社会に対して信頼感が低ければ社会を変えるのが社会の一員であると理解する、というように、私の信じる生き方は正反対に近い。

この本を読んで、スマホはもうあたりまえかと思ってスマホに変えたが、全然必要ではなかったし、電話は不便、電池は保たない、料金はべらぼうに高い・・・今のところ、 スマホのメリットは全く見いだせない。もちろん、本に責任はないが、自己責任は大きかった。

2012年11月18日日曜日

タカハシマコト「その日本語、お粗末ですよ!」、宝島新書

コピーライターである著者は、人一倍言葉に敏感なのに違いない。「貧しすぎる日常会話」として挙げられているものをいくつか示すと、ウィン・ウィン、上から目線、勝ち組・負け組、自分にごほうび、草食系、見える化、バイト敬語など、消化できていない、出来損ないの言葉や日本語としておかしいものなど、私も抵抗がある言葉に対しては、気持ちがすっとする快感を覚える。

一方、 次のような言葉が「お粗末すぎる日本語」として挙げられている。遺憾、維新、失われた○年、オンリーワン、自分探しなど。こちらは、何となく違和感を感じていても、これらの勢いのある言葉に異を唱えるのは難しく、こういう本を読むと、やはりそうだったんだ、と意を強くする(人の書いていることを頼りにしないといけないとはなさけないなあ)。
自分がかけがえのない存在だと思っているのは、あなただけ、つまり、世界でオンリーワンかもしれない。(p.108)
どこにもいる「あなただけ」に、かけがえのない価値はない、ということ。厳しいけど、これはわきまえる必要のある言葉と思う。 もちろん、1人1人の人格を否定しているわけではない。そこの論点の違いをきちんと見極めれば、この言葉を誤解することもないだろう。

おかしな言葉で人の注意を引くということに警鐘を鳴らしている本であると思う。この人の作ったコピーを見てみると、確かに、妙な言葉は一つもない。これは、大いに学ぶべき事と思った。

2012年11月4日日曜日

林望「メイフェア劇場の亡霊」、NHK出版

これは著者のオリジナルな著作であるが、まるでイギリスの短編集のような感じで書かれている。後書きにあるように、誰しも、イギリスにある短編を和訳したものかと思ってしまう。
イギリスの文化(と食事。こちらが重要)を深く知る著者ならではのお話である。お若い頃、たくさん書かれていた随筆を思い出す。こういう人をイギリス通というのだろう。
随筆も面白いが、フィクションも面白い。昔読んだ、「マーシャに」(集英社文庫)は忘れられない。

2012年11月3日土曜日

今野浩「ヒラノ教授の事件ファイル」新潮社

この教授がいままで奉職した大学の様々な問題点を、架空のヒラノ教授が見聞きするような書き方であるが、もちろん、ヒラノ教授とは今野教授のことであろう。
様々な制約のもとで、繰り広げられる「犯罪的行為」を、現役から退職した立場で明らかにしていく様子は、圧巻でもある。

孫崎享「日本の国境問題」、ちくま新書

この種の話の本を読むときには、著者がどういう人かということが何よりポイントであろう。この孫崎氏は、多くの国の大使を歴任後、防衛大学校教授を経て、退官されている。「現場」を経験している人なので、ある意味、安心して読むことができた(それ以上、この人のことについては、私は知らない)。
この人の話を読むと、国際関係では、明文化されていない、今までの経緯がいろいろあって、それを踏まえてバランスが取れていることがわかる。そこを知らずに政治をすると、とんでもない損をしたり、相手を怒らせたりすることがあるということらしい。そういう意味では、現政権が、どうも過去の経緯をあまり踏まえていないような印象がある。
決して相手の味方ではないが、こういう問題における立ち位置をどのように置く必要があるのか、日本は今後どうなるのか、ということについて現在のままではまずいという警鐘を鳴らしている本であると思う。

2012年10月6日土曜日

益川敏英「僕がノーベル賞をとった本当の理由」フォーラムA

英語ができない,ものを書くことが嫌いという,ノーベル賞受賞者とは思えないキャラの益川先生の講演会でのお話をベースにした薄い本である.1時間ほどで読むことができた.
いわゆる優等生ではなく,偉ぶることも嫌いな,とてもなじみやすいところがいい.本当の科学者とはこんな人なのだと思った.アインシュタインでも,エジソンでも,こういう感じなんだよね.そういえば,田中耕一さんも,もっと会社員風だったけども,素朴でしたね.
好きな勉強を自分の思うままにとことんやるということ.いやな勉強は無理してしなくていいと.いいですなあ.

2012年9月21日金曜日

鷲田小彌太「漱石の「仕事論」」、彩流社

漱石の書いた物の中にある、仕事論をまとめ上げてある本である。実のところ、漱石の本はなかなか読みにくいので、こうしてあると非常に助かる。
「現在に働け、評価はあとからやってくる」など、なるほどと思うことが多い。自分で漱石の著作からこれらの部分を見つけるのはなかなか大変であろうが。
まさに、この本のタイトルの通り、漱石の仕事観を知りたければ手っ取り早くわかる。

2012年9月16日日曜日

土光敏夫「土光敏夫 私の履歴書」、日本図書センター

岡山出身の財界者で、「メザシ」で有名な土光敏夫氏の自叙伝である。
冒頭にある財政改革の問題では、国債83兆、地方債40兆で、今すぐにでも破産すると書かれている。実はいま、その10倍ほどの借金が積もりに積もっているが、未だにこの問題は決着しておらず、遙かに深刻な問題になっている。今土光氏が生きていたらどういうだろうか。
土光氏は、贅沢をせず、無駄な金を使わなかった。今、国民は、税収の2倍のお金を毎年使っているが、この先、どうなるかは火を見るよりも明らかであろう。いまこそ、土光さんに学ぶことがあるのではないだろうか。
この本の話に戻そう。岡山の関西中学から東京高等工業学校(現東工大)を経て、石川島の社長から東芝社長、経団連会長などを歴任している。そうした社会的ポジションとはうらはらに、海外旅行にいけばお土産すら買わず、金婚式は庭にござを敷いて行い、・・・といった話が出てきて、メザシだけではなくて、本当に「簡素」な生活を心がけておられたことがわかる。

冷蔵庫にはいつの間にかメザシが。

2012年9月15日土曜日

加藤、小山(編訳)「ラーニング・コモンズ」、勁草書房

共同で勉強・作業する場を大学図書館の中に設けるという、ラーニング・コモンズの翻訳論文および国内大学での調査報告となっている。

ラーニング・コモンズはイギリスやアメリカなどで盛んになっている。日本の大学図書館も、乗り遅れまいと、必死の状況である。
ただ、私個人は、国内での、さらには自大学での状況をよく見て、実態に合ったものを作る必要があると思っており、よそのまねをしてもうまくいかないのではないかと思う。そもそも、仕事をする際に、日本では大部屋で、机の間に衝立もない環境が極めて一般的であるのに対し、欧米では1人1人、オフィスになっている。それくらい、仕事のやり方が違うのに、大学で同じ形態が取れるのかと言われると大いに疑問を感じる。また、文系と理系での違いも大きいだろう。理系の研究室は、ある意味、既にラーニング・コモンズである。さあ、どうすべえ?

2012年8月13日月曜日

夏目漱石「吾輩は猫である」、角川文庫

実は、少年時代、我輩は猫であるは読んでいなかったのです。最初の出だしだけは読むけども、あとの長い長い猫の語らいのような文章はなかなか読むには骨が折れるのですよね。
でも、今回、読破中です。雑煮の中にある餅を食おうとして、猫が四苦八苦するところなんか、腹の底から笑ってしまいました。「何でも知っているけど、知らない顔をしているだけ」みたいな猫だからこそ、人のような感情を猫にかぶせて擬人化しているのが面白いのですね。これが犬だったらこうはいかなかったかもしれません。

六十二で生きているくらいだから、丈夫と言わねばならない・・・時代を感じます。今だったら、六十二ではなく、九十二でしょう。

まだ途中ですが、記録しておきたくなりました。

2012年8月7日火曜日

夏目漱石「三四郎」角川文庫

懐かしい大学時代を思い出す。意味のない虚勢を張ったり、取っつきにくい女の子にあこがれたり、無駄な時間を一生懸命費やしたり、そういうことを思い出させてくれた。
授業期間が始まっても授業が始まらないのが大学か。私の頃もそうだった。授業があるかどうかは、学校に行って掲示板を見て始めてわかるというのが常識であった(私の行った大学では)。そうではなくなったのは、日本の長い大学の歴史の中でわりと最近のことなのだが。 効率を求めない社会の良さは全く顧みられない現代であるが、昔よりいい社会かどうかは大いに疑問がある。

2012年7月21日土曜日

滝本哲史「武器としての交渉思考」、星海社新書

交渉はゼロサムゲームではない。このことは、我々は感覚的にはわかっているのに、オペレーションズリサーチでは、あたかもゲームの真理のように教わる。このへんの嘘くささがORが実際に世に普及しない原因だろう。
本書では、ゾーパ、アンカリング、バトナなど、交渉の際のキーワードが明快に示されていて、非常に刺激的で面白い。

2012年7月20日金曜日

夏目漱石「こころ」、角川文庫

私が少年時代、読んだかどうかよく覚えていない。姜尚中「続・悩む力」に感化されて、読んだ。
人の心の中をこんなに詳しく語った本を他に知らない。青春、友情、恋愛といった、若き日のテーマがこの中に詰まっている。心の中を深く追求することがない現代こそ、この本は読まれるべきだと感じた。

2012年7月14日土曜日

姜尚中「続・悩む力」、集英社新書

前半は漱石とウェーバーに学ぶという姿勢で貫かれている。漱石が1世紀以上も前、ロンドンで言葉や文化、お金など、いろいろな面で不便な生活をしたと思われるが、
みんな紳士的、淑女的にスマートに交際しているのですが、打ち解けた信頼感や団居や情愛といったものは乏しく、自意識過剰による緊張と、孤独と、殺伐の感じばかりがあるのです。
それを見て、漱石は暗澹たる心持になりました。
というあたり、漱石はしっかりと「自由」というものの本質(悪い意味での)を見極めていたということで、それをこの書は指摘している。
この本を読んで、漱石の本を3冊注文した。だって、漱石の本は私が少年のころ、それこそ、流し読みをしただけで、しっかりとは読めていないから。

2012年7月1日日曜日

姜尚中「悩む力」集英社新書

政治学者であるが、思想家、哲学者といってもいい、在日の学者である。
この人の本を読むと、とてもしなやかな頭脳を感じる。漱石とウェーバーを対のような形で愛し続けてきた著者が、一貫してこれらの大先輩の考え方や主張にそって自分の論を展開している。
私とは何か
世の中すべて金なのか
しっているつもりじゃないか
青春は美しいか
信じるものは救われるか
何のために働くのか
かわらぬ愛はあるのか
なぜ死んではいけないか
老いて最強なれ
といった章のタイトルからは、ハウツーものを想像するが、そういう意味では当てがはずれる。自分の頭で考えなければ書かれていることも頭に入らない、とても勉強をさせられる本であると思う。若い人にぜひおすすめの1冊である。

2012年6月23日土曜日

橋本治「これで古典がよくわかる」,ちくま文庫

カタカナ混じりの日本語,ひらがな混じりの日本語がどういう風に出来てきたか,誰が使っていたのか,男と女は使った文字がどう違っていたのか,というようなことがわかりやすく書かれている.
といっても,もともと古典にそれほど興味がない者が深い興味を持つのは難しいと感じた.

2012年6月17日日曜日

新田次郎「小説に書けなかった自伝」新潮文庫

公務員との二足のわらじを履き,最後に小説家として独立した経過が詳しく述べられている.今まで新田次郎とは,山岳小説だと思っていたが,この本を読んで,それは新田次郎氏が否定していたことがわかった.また,山岳家からは,いろいろと厳しい意見が出されていたことを知った.
何事も,文句をつけることは簡単だろう.それに対してどう立ち向かったかというような点が非常に参考になった.

2012年5月27日日曜日

酒井順子「女流阿房列車」新潮文庫

タイトルからわかるように、内田百閒の阿房列車を意識した内容である。この作者は鉄ちゃんを自認しているが、まさにそのとおりである。 500系を「ウツボさん」というところなど、列車に愛情をすらお持ちのようですね。それにしても、言われてみれば、ウツボとはよく言ってくれました。面白い。

2012年5月26日土曜日

北川智子「ハーバード白熱日本史教室」,新潮新書

専門ももともと理系ばりばりの著者が,ハーバード大学で日本史を教え,ものすごい人気を博すそのストーリーが描かれている.聴講者が1,2名を想定していたのに,あっという間に百人以上,最も学生に人気があった人に贈られる賞など,全く疑いなくすばらしい授業と人気を得た人の自伝.
これを読んだら,あまりにショックで,これから授業をするのが怖くなった.どうしよう・・・

2012年5月24日木曜日

石川知裕「雑巾がけ」,新潮新書

小沢一郎の弟子で有名になった,石川議員の,修行の日々が書かれた本である.小沢一郎という人がどれだけ高いところにいる人かということがよくわかった.決して,我々と同じ目線でものを見る人ではないようだ.
石川議員は,これで何を言いたかったのだろうか.

福澤諭吉(山本博文訳)「福澤諭吉 幕末・維新論集」ちくま新書

旧藩情,痩せ我慢の説,明治十年丁丑公論,士人処世論よりなっている.士人処世論は,その当時も公務員人気だったようであるが,いいことばかりではないと,その風潮を咎めている.まるで今の公務員指向のようだ.
現代語訳なので,読みにくい訳ではない.ただ,忙しくて頭が疲れている人間には,少々読むのに骨が折れた.

2012年5月1日火曜日

曾野綾子「人間の基本」新潮新書

最近、他の本に書いたことを寄せ集めたような本が多かった曾野綾子さんですが、今回はしっかりした本です。
何事も自分の頭で考え、正しいと思うことをずばりおっしゃるこの爽快さは、なかなか得がたいものです。特に、貧困や病気、ルールで動いていられないような社会におけるこの方の考えは、まさに「人間の基本」だと思います。この人の本を読むと、たくさん折り目を付けることになります。折り目は、私が後日読み直すときにポイントとなるしおりです。

2012年4月30日月曜日

阿川佐和子「聞く力 心をひらく35のヒント」文春新書

週刊文春の対談をずっと続けている彼女であるが、対談をするときの聞き役としてのお話がいろいろと書かれている。これを読んでわかったことは、たくさんの話を聞く準備をするよりも、1つから3つくらいの質問を考えておいて、あとは相手の話の中から質問することを引き出すということであった。

2012年4月27日金曜日

五木寛之「下山の思想」幻冬舎新書

「トンデモ本」の部分が面白い。常識とは全く異なる説を唱える本のことだ。法然の「選択本願念仏集」が古今東西の「トンデモ本」の中で、最高、最重要な一冊だろう。
とある。おお!岩波文庫にあるではないですか!
でも、俗物の刺激の強いものに浸っている私が、こういう高級なトンデモ本を楽しむことができるのだろうか?

下山の思想の本そのものは、何事も右肩下がりの今の時代を正しく理解せよという本である。五木氏にとって、若いときは登山、年を取ってきてから下山というのが社会の状況だから、彼の成長とちょうど同じで、受け入れやすいのだと思う。私もそうだ。
それを考えると、今の若い人は、自分はこれからなのに、社会が下山状態というのは、とても気の毒に思える。そういう若い人から、新しい思想が生まれてくるのだろう。それに期待したい。

2012年4月24日火曜日

佐伯啓思「反・幸福論」新潮新書

ごまかしをせず,心を裸にしたとき,こういうところに考えが落ち着くというところをずばり書いている.
時にはこういう人の本を読むことが必要である.

2012年4月16日月曜日

ドナルド・キーン「私の大事な場所」、中公文庫

日本に帰化されたキーンさんが、自分の好きな町、自分の日本研究での様々な思い、亡くなって惜しむ人の名前、そして、好きなオペラについて書かれている。80代も終わりに近い著者とはとても思えないしっかりした文章(これを書かれたのは7年ほど前ではあるが)である。日本人には気づいていない日本の良さが、こんなにあるのかと驚かされる。

2012年4月9日月曜日

向田邦子原作「きんぎょ」、文春文庫

この本は、向田邦子の放送台本を、別の人が小説化したものだそうである。道理で、すごく物語性があると思った。3つ話があるが、親子や恋愛といったテーマが、憎いほど生き生きと描かれている。

2012年4月8日日曜日

岸本葉子「ブータンしあわせ旅ノート」、角川文庫

国宝夫妻の来日以来、ブータンは私にとっても親近感のある、興味のある国である。国民の幸福感が非常に高いと聞く。著者は、ブータンに個人旅行で行ったときの話をこの本にまとめている。
幸福感が、いわゆる生活レベルが高いということとは全く異なるということは、読む前から予想していた。しかし、不便な生活に不満を持っていたら、幸福感は生まれないだろう。いったい、どういう社会なのか、非常に私も興味がある。
ブータンでは、人は静かと言っている。日本人と同じく、気遣いがすごいみたいだ。顔も日本人と似ている。ただ、著者は日本人に対して、大きな不満を持っている。他人同士があまりにも無関係で思いやりが失われている日本に対して、黙っていられないという点が、終わりのほうを読むとわかる。 日本の若い人が、外国の家庭に滞在して、うるるんとして帰るというのは、ほほえましいというよりも、そういう感動が全くなくなっている今の日本が少しおかしいのではないか?と私は思っている。

2012年3月23日金曜日

阿川弘之「言葉と礼節」文春文庫

座談集である.座談の相手は,
  • 三浦朱門
  • 藤原正彦
  • 村上龍,阿川佐和子
  • 大久保房男
  • 半藤一利
  • 原武史
  • 半藤一利,養老孟司
である.いつもながら,言葉の部分に興味を持った.

  • 生きざま
  • こだわり
  • 癒やし
  • させていただきます
  • じゃないですか

などがめった切りである.大変愉快.私の嫌いな言葉とぴったり一致する.あとは,言葉ばかりではなく,むしろ,歴史的なことをいろいろと教えてくれる.日本人としての自信を抱かせてくれる本である.

2012年3月18日日曜日

「美しい日本語と正しい敬語が身に付く本」、日経おとなのOFF

私は言葉の使い方は学生にうるさく言ってきたのだが、私自身、意識していなかった言葉の誤った使い方がたくさん示されている。この際、言葉に徹底的にうるさくなれるよう、勉強しようかなとも思う。

2012年3月10日土曜日

酒井順子「女も、不況?」講談社文庫

この人の文章は読みやすい。どんどん頭に入ってくる。「負け犬」で有名な彼女だが、その目は確か。男の私から見ても、確かに女性はそういう風にいうよね、というところを素直についている。
女たちの代表みたいなスタンスで書いていながら、いやな感じは全然しない。ある意味、私はこの人の筆に惚れているのかもしれない。

2012年3月9日金曜日

適菜収「世界一退屈な授業」星海社新書

内村鑑三、新渡戸稲造、福沢諭吉、柳田国男、西田幾多郎のメッセージを、若い読者たちのために編纂した本である。この本のタイトルは、もちろん「皮肉」である。いまの若い読者たちがまず思う「世界一退屈な授業」に属する範疇の話であるが、作者はもちろんこの内容を非常に重要なものと思っている。
本のタイトルや中の作りが少々奇をてらいすぎており、残念である。もっと普通に作ったら、よい本だということになるのに、残念に思った。

土光敏夫「信念の言葉」PHP研究所

私のいま住んでいる岡山出身の著名人である。空港で出発待ちの時に購入して読んでみた。
「めざし」が有名だが、この人の質素な生活の本質は私にもわかるような気がする。そもそも、忙しくなったらくだらないことにお金を使って、神経を使っている暇などない。
この本がめざしに終始しているのではない。むしろ、トップに立つ人の心構えがてんこ盛りの本である。いろいろな意味で人の上に立つ人は一度は目をとおす価値のある本である。