2010年9月26日日曜日

藤原正彦「おおいなる暗愚」、新潮社

普段あまり単行本は買わないが、何人か、あまり考えずに買う人がある。それは、この藤原正彦や、林望などである。
最近この人のものはジョークが多くなってきて、それを知らない人は、ナルシストと思うかもしれないが、そういうわけではない。
いろいろな身近なテーマが、歯に衣を着せずに手短にしかもわかりやすく書かれており、なるほどと思う部分も多い。「愚かしき官僚叩き」は、いま流行りの政治主導に異論を唱えている。

政治家は官叩きに走るより、官僚の無法な天下りや優秀なものにありがちな狡猾傲慢を厳しく警戒しつつ、ポピュラリズムとは無縁な官僚を知恵袋として、共に手を携え国に奉仕してほしい。優秀な人材はどの国においても数が限られており貴重だ。叩き潰す余裕などないのだ。(p.171)

同感だ。また、最近の日本の外交の問題点も、ことが起こる前から的確に捉えている。

2010年9月8日水曜日

武光誠「「型」と日本人」、PHP新書

読み始めて、いきなり違和感のある表現にあたった。
がいして欧米人は、身内や友達をたいせつにしても、行きずりの他者にまで細かい気配りをする発想はない。(p.13)
これには異論がある。今の日本人がそうなのではないだろうか。ヨーロッパでは、行きずりの人に対しても親切に道を教えたり、ドアを開けてあげたり、ベビーカーを抱えてあげたり、枚挙に暇がない。振り返って日本ではどうだろうか。知らない人には何があろうと知らん顔。目の前で交通事故が起こってもほとんどアクションを起こす人などない。もちろん、町で先に挙げたような優しさを堂々とする人など非常に少ない。
そのために多くの日本人が、人の気持ちを重んじるか、論理を重んじるかで悩んでいるように思われる。(p.14)
う~ん、どちらも重んじない人が大多数ですよ。その選択というのは、現代の日本人の悩むポイントではないだろう。どういう側面を見てこういうことを著者は書いているのか、かなり最初の著者への波長あわせに苦しむ。
誰もが、電車で老人に席を譲るといった小さな善行を見てすがすがしい気分になる。このような、日本人の通りすがりの他人に対する心暖まる美しい行動に感激する気持ちは、美しい花を愛でる感情に近いものであろう。(p.16)
先ほど書いたように、電車で老人に席を譲る人は、日本は諸外国、とりわけ、ヨーロッパや韓国などに比べてずっと少ない。「いや、それを見ている人の気持ちのことだよ」ということであれば、外国人がそういう場を見て、同じように感じないということだろうか。この、導入部はなかなか共感が難しい。
あまり一般的に認められないことを当たり前のように書くからには、もっと説明がほしいと思う。

追記:そのあとを読み進めようとしましたが、ちょっと怪しく感じるところが多く感じます。たとえば、「縄文人は円形に住居を構えていたから人間すべてが平等と考えていた」というくだり、 私は素人ですから、円形に住居を構えていたからということだけで、人間すべてが平等と考えていたと信じることは困難です。専門的な視点があるのであれば、たとえ素人向きの本であっても、納得のいく説明が必要と思います。全体がこういう論理で書き進めてあるので、理解をしていくのに抵抗があります。

ということで、とりあえず、この本を読破することは断念しました。

2010年9月5日日曜日

布施克彦「男なら一人旅。」、PHP新書

もともと一人旅が好きだった著者が、50代で商社を辞めて作家になった。そして、一人旅を再開した。他の人がどんな一人旅をするのか、それを知るのは面白い。自分でも、一人旅をしてみたいと思う気持ちになる。


「旅の定義」などという部分が前半出てくるが、こういう部分は邪魔だ。教科書を読んでいるのではない。お節介というものだ。その辺を抜きにして読めば、それなりに楽しい。

2010年9月4日土曜日

松田忠徳「温泉に入ると病気にならない」、PHP新書

温泉教授として名高いらしい著者の「温泉免疫術」である。掛け流しの天然湯がいかによいか、シャワーはなぜだめか、かなりの医学的な知識を元に書かれている(と思われる)。
少なくとも、こちらが持っている温泉や発癌に対する知識と矛盾しないので、安心して読める。

それはそうと、湯上がりの冷たいビールは体に良くないらしい。体を中から冷やすことになるからだ。折しも、今日、同じことをテレビで言っていた。冷たいビールを飲むと、体が防衛反応として暖めるために、内臓脂肪を蓄えるらしい。
ビールは、カロリーだけ見ると大したことはなさそうに思えるが、やはり太る原因になるようだ。特に内臓脂肪がたまるというのはよくない。
これからは、暑いときも焼酎のお湯割りと行くか。ああ~

2010年9月2日木曜日

ビートたけし「たけしの最新科学教室」、新潮文庫

たけしと、科学の諸分野の第一人者との対談集である。
  • ロボット
  • 植物
  • 気象
  • 天文
  • 遺伝子
  • 恐竜
  • セミ
  • 地球環境
の分野の先生が続々と出てくる。この中の「植物の達人」こと、田中修先生は直接知っており、今日、この本のことを言ったら、「もう売り出されているんですか?」とビックリされた。この先生の弁によると、たけしさんは次から次へと話が出てきて、「本当にすごい。自分の本をしっかり読んで対談されている」ということだった。私も、この本でカバーする広い範囲で、非常に専門的な問いかけをたけしさんがしているのを見て、すごい人だと改めて感心した。たけしさんに文部科学大臣にでもなってもらいたい。