2013年10月9日水曜日

松田卓也「2045年問題」、廣済堂新書

2000年問題とは、コンピュータの中で管理している西暦が一と十の桁しかないための問題であったが、2045年問題とは何だろうか?興味を持ってこの本を購入し、読んでみた。
2045年問題とは、コンピュータの能力に関する問題であった。2045年に、技術的特異点、すなわち、コンピュータの能力が人間を大きく超え、人間を脅かす存在になる年ということらしい。
コンピュータが意識を持つかどうかということと大きく関係する。コンピュータが意識を持たない存在であれば、有益な道具として使うことに問題は生じないと思うが、このあたりの問題が2045年問題たるゆえんである。人間にとっても、自分の脳の拡張が世界のクラウドコンピュータの世界に広がるという状況は、今でも概念的にはわかる状況ができつつある。しかし、これからは、体外に自分のクローンができたり、さらには肉体をなくして、コンピュータの中にしか自分が存在しなくなるというようなSFの世界みたいなものまで書かれている。
私は、コンピュータは単純な道具としての利用者であり、そのレベルを超える、意識の世界におけるコンピュータのあり方に興味がない。今後は、むしろそうしたものに対して抵抗しながら生きていくこれからの自分の姿を予感した。

2013年10月3日木曜日

小林雅一「クラウドからAIへ アップル、グーグル、フェイスブックの次なる主戦場」、朝日新書

クラウドは、手元のモバイル機器からデータをホストに送り、重い処理をこなしてまたモバイルに結果を送ってみせるという処理方式において、インターネットによりどこからでもホストにアクセスできるというユビキタス性を利用した形態であることは、クラウドを様々な形で使っている人はご存じだろう。一方、AI(人工知能)は私から見るといささかかび臭い言葉である。あまり期待せずに読み始めたら、自分がキャッチアップできていなかったところが明確にでき、強く感化された。
 AIは、昔ながらの決定木を使ったものではなく、ベイジアンネットワークの時代を経て、ディープラーニングが今ホットであることを知った。ディープラーニングは、階層の深いニューラルネットであって、私が学んだ順番はニューラルネット、ベイジアンネット、決定木なので、昔に戻ることを奨励されているようなものである。ディープラーニングを含むAIを使った新しい技術が、現在の技術革新の中核をなしていることがわかった。
 第三章「知性の値打ち ―AIが生み出す巨大なビジネス・チャンス」が私にとっては最も値打ちがあった。AIを搭載したSiri、自動車や移動ロボットに搭載されるSLAM、介護・介助におけるロボットの巨大市場。これからは間違いなくロボットの時代であることを、この本を読んで確信した。
 この本のタイトルには、「クラウドからAIへ」と、いかにもクラウドの時代が終わりかのような書き方がされているが、読んでみると、そういう趣旨ではないようだ。スマホ、Googleめがね、タブレット、移動ロボット、どれを見てもすぐに廃れるものではないが、計算能力が低く、そこで大きなAIプログラムを走らせるわけにはいかない。クラウドを構築して、強力なAIシステムを走らせるのも悪くないなと思った。ここ十年ほど、機械学習の研究から遠ざかっていたが、少し戻ってみようと私に思わせてくれた本である。