2012年7月21日土曜日

滝本哲史「武器としての交渉思考」、星海社新書

交渉はゼロサムゲームではない。このことは、我々は感覚的にはわかっているのに、オペレーションズリサーチでは、あたかもゲームの真理のように教わる。このへんの嘘くささがORが実際に世に普及しない原因だろう。
本書では、ゾーパ、アンカリング、バトナなど、交渉の際のキーワードが明快に示されていて、非常に刺激的で面白い。

2012年7月20日金曜日

夏目漱石「こころ」、角川文庫

私が少年時代、読んだかどうかよく覚えていない。姜尚中「続・悩む力」に感化されて、読んだ。
人の心の中をこんなに詳しく語った本を他に知らない。青春、友情、恋愛といった、若き日のテーマがこの中に詰まっている。心の中を深く追求することがない現代こそ、この本は読まれるべきだと感じた。

2012年7月14日土曜日

姜尚中「続・悩む力」、集英社新書

前半は漱石とウェーバーに学ぶという姿勢で貫かれている。漱石が1世紀以上も前、ロンドンで言葉や文化、お金など、いろいろな面で不便な生活をしたと思われるが、
みんな紳士的、淑女的にスマートに交際しているのですが、打ち解けた信頼感や団居や情愛といったものは乏しく、自意識過剰による緊張と、孤独と、殺伐の感じばかりがあるのです。
それを見て、漱石は暗澹たる心持になりました。
というあたり、漱石はしっかりと「自由」というものの本質(悪い意味での)を見極めていたということで、それをこの書は指摘している。
この本を読んで、漱石の本を3冊注文した。だって、漱石の本は私が少年のころ、それこそ、流し読みをしただけで、しっかりとは読めていないから。

2012年7月1日日曜日

姜尚中「悩む力」集英社新書

政治学者であるが、思想家、哲学者といってもいい、在日の学者である。
この人の本を読むと、とてもしなやかな頭脳を感じる。漱石とウェーバーを対のような形で愛し続けてきた著者が、一貫してこれらの大先輩の考え方や主張にそって自分の論を展開している。
私とは何か
世の中すべて金なのか
しっているつもりじゃないか
青春は美しいか
信じるものは救われるか
何のために働くのか
かわらぬ愛はあるのか
なぜ死んではいけないか
老いて最強なれ
といった章のタイトルからは、ハウツーものを想像するが、そういう意味では当てがはずれる。自分の頭で考えなければ書かれていることも頭に入らない、とても勉強をさせられる本であると思う。若い人にぜひおすすめの1冊である。