まず著者の略歴から。東大教養学部卒業後、NHK入局。2001年アメリカコロンビア大学MBA取得。12年、コンサルタントとして独立ということらしい。才媛である。
アメリカの大学の先生にも直接アタックして、多くを取材して書かれた本である。この本の中心に据えられているのは、JR東日本テクノハートTESSEIのことである。
テッセイは新幹線の清掃業務を請け負っている会社であり、ハーバード大学経営大学院のイーサン・バーンスタイン助教授がテッセイを訪問・取材し、感銘を受けたことが、本書の発端である。JR東日本では、7分間ですべてのトイレ掃除と全車両の掃除を終わらせる。これが、まるで劇場のようだと、Shinkansen Clearning Theatreとして紹介された。私も、JR東海や西日本の車両で、同様の掃除を見ることがたびたびあるが、おそらく同じようにすばらしいに違いない。清掃をしている従業員たちは、その仕事に素晴らしい誇りとやりがいをもって行っている。この点が、ハーバードの先生の目に留まって、教材になって紹介されたのである。
私も、ヨーロッパに住んでいたことがあるので、あちらでの清掃などの仕事がどんな雰囲気で行われているのかは大体見当がつく。決して多くの人から評価されることもなく、階層社会の底辺で、生活のために仕方なくやるということ以外に、彼らから学べるものはあるようには思われない。したがって、日本の新幹線の清掃業務を、マニュアルを作って彼らに命じても、「できません」で終わることが目に見えるようである。
こうしたことは、形は違っても、日本の様々なことにみられる。トヨタの「カイゼン」もあげられている。そこには、リーダーの謙虚さが根底にあるとしている。人を働かせるには賃金を上げればよいという、単純な労働と賃金の関係だけでは説明できない労使関係がある。
歴史、政治・経済、戦略・マーケティング、リーダーシップの視点からも、日本のすごさが紹介されている。終章では、いま、日本人があまりアグレシブでない理由として、快適すぎる国になっている点を挙げている。高齢化社会は、チャンスととらえている。若者と女性の能力は、眠ったままだと言っている。
全体的に、非常に褒めちぎっており、本当にそうなのかと思うところも多々あるが、あまり悲観的になるなと我々に言っている点は、ハッとする部分が多い。もっと肯定的に。楽観的に。私も、そういう風に考えて生きていきたいと思った。
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