2016年3月6日日曜日

栄陽子著、「ハーバード大学はどんな学生を望んでいるのか?-日本人が抱くおおいなる誤解」、ワニブックスPLUS新書

私はアメリカの大学に詳しくないが、世界大学ランキングでダントツの一位であり、世界中から多くの留学生を引きつけているハーバード大学がどんな大学なのか知りたくて、この本を手に取ってみた。著者は、留学のサポートの仕事に就き、その手腕には定評のあるようだ。

日本の大学と違う点は多々ある。まず、入学方法。アドミッションオフィス(AO)が合否を決める。AO入試と聞くと、日本にもあるじゃないかと思うが、実は日本のAO入試はAOになっていない。ハーバードの入試は、アドミッションオフィスという部署があり、そこに受験生を評価する専門家がいて、願書の中にある様々な資料を総合評価して合否を決めるというものである。受験生が提出する願書には、宗教や人種、使える言語などを問うロフィール、親の学歴・職業、兄弟姉妹の詳細、高校でのGPAなどを問う教育歴、ACT、SAT、TOEFLなどのテスト結果、課外活動、エッセイ等である。エッセイは、随筆というより日本でいう小論文に近いものだが、そこでは、代筆などをすればすぐに見破ってしまう専門家が待ち構えている。この内容を見て驚かない日本人は少ないだろう。本人およびそれを取り巻く人々がすべて評価対象となる。面接もあって、遠隔地の場合には依頼された人がカフェなどで雑談をするらしい。「スポーツ万能、成績抜群、生徒会会長を務め、ピアノはショパンを弾き、絵を描けば人の心を魅了する、美しい英語のスピーチは聴衆を惹きつけ、世界の環境問題や自国のあり方にも一家言を持つような高校生が求められる」(本書81ページより引用)。また、親がハーバード出身の場合の合格率は明らかに高い。人を評価するための方法として、何とすごい方法だと思うとともに、日本では決して許されない方法が堂々ととられていることへのショックは大きい。同時に、日本入試制度での、重箱の隅をつつく、いや、顕微鏡で細菌を見つけようとするような、ちまちまとした受験との違いに驚いた。

全寮制で、入れば猛勉強をさせられる。年間納付金は食費を含めて6万ドル(約700万円)。もちろん、それが払えるお金持ちの子息がいることが前提だが、7割の学生は奨学金をもらう。奨学金の申請書には、両親の年収のみならず、納付税額、両親の投資額、借金残高、不動産保有額、年間の家計における光熱費や食費の詳細など、本人及び両親の洗いざらいを申告しなければならない。

そうやって入り、勉強した学生たちは、卒業後、半年から1年程度を掛けながら、就職していくが、一流企業に入ることを目標としていない人がほとんどで、日本のように、3年生の頃から就職活動で授業を休んだりすることは考えられず、大学で、自分の能力を高めることを最大限追求するのがハーバード流のようである。就職についても、一生勤める気など最初からない。学生時代に作り上げた自分の能力を武器に、それから何十年やっていく自信がついている。

学生諸君がこの本を読んだら、私とは違う感想を持つかもしれない。大学の価値は何なのか、自分は学生時代にどのような時間を過ごすべきなのか、是非考えてみてほしい。



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