先に読んだ、藤原正彦氏の「名著講義」で紹介してあった本である。そうでもない限り、こういう古い本を読むことはあまりない。
この本の筆者は、1928年~1936年、外交官でご主人になるジョージ・サンソム氏と日本にやってきて、その直後日本で結婚し、8年間日本で暮らしたときのあれこれが書かれている。
日本は昭和初期であり、私もあまり知らない時代であり、その頃の日本人の様子がよくわかる。どうかというと、日本人の性格を驚くほどよく捉えている。もっとも、ごく最近の日本人は少々違う。私の知っている、昭和の時代の日本人そのものである。
その当時から、日本人はイギリス人の筆者にはとても親切だったようであり、この本を読み進めていくと、同じ日本人として、うれしくなるような感覚だった。いわゆる、「おもてなし」精神は当時も(というか、当時は今以上に)あったようである。
もちろん、今ほど経済的に豊かではないが、それでも、精神的には当時の日本人が非常に豊かであったことを知ることができる。
筆者は日本の風呂が好きだったようで、 日本では混浴が当たり前だったことに驚きと関心を持ったようである。白人がその当時に混浴の風呂に入ったら、どういう視線があったか、想像に難くないが、不快な思いはされなかったようで、西洋人の想像できない日本人の風呂文化があったと思われる(今は混浴は少ないが、そういうところでは昔も今も変わりないだろう)。
戦前に、イギリス人がこのように、日本を体験していたことは、私の想像を超えるものがあった。どうしても、今の日本をその時代に重ねて考えてしまうが、政治的なものは抜きにして、人と人、文化の視点で外国人を直視することの大切さを知った。
2014年2月23日日曜日
2014年2月16日日曜日
福澤諭吉著齋藤孝編訳「福翁自伝」、ちくま新書
私は最近少々古い本に凝っている。この本は諭吉が晩年、半生を振り返ってかなり自由な感じで書いた本である。現代語訳になっているので、すらすら読める。訳者の齋藤孝氏も、この本は「学問のすすめ」と一緒に読むことを勧めている。私も以前、学問のすすめはまさに齋藤孝氏の訳で読んだ。学問のすすめも意外に面白いと感じたが、福翁自伝は福澤諭吉の人間性があふれていて、なかなか興味深い。
福澤諭吉と言えば慶應義塾大学の創立者として有名であるが(1万円札といったほうがもっとぴんと来るか?)、江戸時代末期に咸臨丸に乗り込んでサンフランシスコに行ったときの話が面白い。ペリーが浦賀に来てから10年後に日本から大挙してアメリカに視察に行ったことは、アメリカ人から驚きを持って迎えられたそうである。非常に歓待されたとも言っている。まだ英語を使いこなせる日本人が少なかったこの時代、オランダ語に訳して理解していたというから面白い。アメリカのホテルは、おそらく今のホテルとあまり変わらないと思うが(もちろん違う部分があるだろうが、日本の当時の旅籠と今のビジネスホテルのような違いはきっとないに違いない)、刀を差してホテルの中を歩いている姿を想像することは面白い。当時、まともに辞書もなく、コピー機もない時代にどうやって外国語を理解したか、非常に興味深い。
福澤は、咸臨丸に乗る前に、大阪の緒方洪庵の塾に入って医学の勉強をしている。そこでしのぎを削って勉強した様子が面白い。まさに、歴史ドラマの中に出てくる世界である。当時、勉強しようとしたらまず本を写すことから始めたことが、改めてわかる。本もなく、丁寧に手取り足取り教えてもらえるわけではない。他の人の目を盗んで勉強するのである。人間の勉学への意欲は、勉学の環境とはほぼ無関係、いや、負の相関があるようにも思える。彼のごく近辺で、腸チフスやコレラなどの病気でなくなる人も多数あったようで、ほんの一昔前まではこういう世界の中で人間は生きていたのだということが改めてわかる。
福澤は大の酒好きだったようだ。博打や女郎屋には近寄らない。いつも、冷静沈着ながら、いろいろなことに興味を持って、大きく生きていた様子が、この自伝から伝わってくる。
2014年2月10日月曜日
藤原正彦「名著講義」,文藝春秋
言わずと知れたお茶の水の先生の単行本.出版されたのは2009年末だから,4年前の出版だが,いままでほとんど読まずに積んでいたのを,このほど取り出して読んでみた.
毎週文庫本を1冊ずつ課題に出し,読んできたその本について,教授と学生の間でいろいろとディスカッションをするというゼミの様子を本にしたものである.今で言う「反転学習」の先駆的なものか.
本は,古き時代の日本を紹介し,日本人とは何か,日本人とはこんなにすばらしい民族だということを誇示するような本が並んでいる.挙げてみると,
武士道
余は如何にして基督信徒となりし乎
学問のすすめ
新版 きけ わだつみのこえ
逝きし世の面影
武家の女性
代表人日本人
山びこ学校
忘れられた日本人
東京に暮らす
福翁自伝
若き数学者のアメリカから郷愁へ
となっている.最後のものは藤原氏自身の本である.
昔の日本人が書いたものを直接読むということは,語り部の話を聞くようで,大変心にしみる.日本人の特性で,我々が忘れている特質を思い出させてくれ,それがまた自信につながるような仕組みとなっている.当時の外国人から見た日本・日本人のものも含まれており,日本人がいかにすばらしい人々なのかを教えてくれる.
この本を読んで,学生がしっかりと予習をしてきているからできるということ,また,その本の主張にご自身の主張を重ね合わせて学生にしっかりと日本人教育をしているところに感動を覚えた.
毎週文庫本を1冊ずつ課題に出し,読んできたその本について,教授と学生の間でいろいろとディスカッションをするというゼミの様子を本にしたものである.今で言う「反転学習」の先駆的なものか.
本は,古き時代の日本を紹介し,日本人とは何か,日本人とはこんなにすばらしい民族だということを誇示するような本が並んでいる.挙げてみると,
武士道
余は如何にして基督信徒となりし乎
学問のすすめ
新版 きけ わだつみのこえ
逝きし世の面影
武家の女性
代表人日本人
山びこ学校
忘れられた日本人
東京に暮らす
福翁自伝
若き数学者のアメリカから郷愁へ
となっている.最後のものは藤原氏自身の本である.
昔の日本人が書いたものを直接読むということは,語り部の話を聞くようで,大変心にしみる.日本人の特性で,我々が忘れている特質を思い出させてくれ,それがまた自信につながるような仕組みとなっている.当時の外国人から見た日本・日本人のものも含まれており,日本人がいかにすばらしい人々なのかを教えてくれる.
この本を読んで,学生がしっかりと予習をしてきているからできるということ,また,その本の主張にご自身の主張を重ね合わせて学生にしっかりと日本人教育をしているところに感動を覚えた.
登録:
投稿 (Atom)