著者は、「日本人」が日本から消えゆく状況にあると思っている。この本では、25名の「日本人」が、著者のインタビューに基づいて描かれている。その中には、著者が養子になった、高峰秀子とその夫松山善三氏が含まれている。その他は、吉行あぐり、双葉十三郎、緒形拳、石井好子、永六輔、山田太一、中村小山三、安野光雅、戸田奈津子、水木しげる、伊東四朗、澤地久枝、山田洋次、佐藤忠男、森英惠、岩谷時子、サトウサンンペイ、出久根達郎、鈴木史朗、野村万作、天野祐吉、佐藤忠良、松山善三、王貞治という面々である。
どちらかというと、表に自らを出さず、黙々と信じるところを生きてきた人が描かれている。鈴木史朗、佐藤忠男などがその最たるところであろう。
私は、昭和31年、日本という国に生まれた偶然を、感謝している。まだ貧しさの残る時代だったが、少なくとも今よりは、正しいことが正しいとされ、悪しきことが悪しきこととしてみなされ、努力することを誰もが美しいと信じていた時代に子供時代を送れたことを、幸せと思っている。
これは、王貞治のところに書かれている、著者の心情の発露である。私も著者と同じ昭和31年生まれである。人の心は育った時代が大きく左右するものだと思う。そういう意味では、ほしいものが何でもあるが将来の展望がない今の時代に育った人は本当に気の毒だと思う。こう思うのは、「今より将来はよくなる」と信じることができた我々世代の人間だからであろう。
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