ツイッター、Facebook、LINE…隆盛を極めているが、皆が楽しんで使っているのか?どうも、いろいろな問題がある。著者は、SNSが使えないような古くさい人ではないし、実際、多くの使用経験も持つ。だからこそ、こうしたシステムに対して、真正面から議論を挑むことができるのだろう。
1章では、SNSにおいて、24時間、いつも自分をさらけ出すものだと思っているために生まれる問題点を筆者は強く指摘しているようである。分娩台にいるときの様子や、夫婦の間のことなど、それを、目の前にいる自分に臆面もなくさらけ出されることの不快感、顔が見えないことによる、出会い系での性別詐称、ブログでは嘘を書くことが許されないと自己規制するあまり、リッチな自分をブログで演出するために多大な出費をする人、これらをSNS疲れと呼んでいる。
2章では、ネット上で人は傷つけ合うことを例示している。このことは、多くの人が経験しているだろう。さらに、自分で自分をだますということがおこるということを指摘している。そこには、匿名性が潜んでいる。
3章はネトウヨについて論じている。4章はプチ正義感。普段はいい加減な人たちまでが、ネット上では、えらく正義感あふれた、ご立派なご仁になられる。これによって、どれだけ窮屈な社会になっているか。
5章ではネット・スマホ依存を明確に病気として位置づけている。6章はSNSが日本をどうかえるのかということを、現在の政治を引き合いに出して論じている。
全体的に、極めてSNSに対して否定的な論調であり、厭世的でもある。解決していく糸口も見えない問題の山を目の前にして、それだけはいやだと言っているように見えるが、あきらめているように見える。
読み進めていくと、私は著者とほぼ同世代のせいか、ほとんどの部分に納得でき、精神科医である著者に教えられる面も多い。要するに、大変勉強になったという感じが強いが、明るい未来は見えない。