2011年4月21日木曜日

ドナルド・キーン(角地幸男訳)「ドナルド・キーン自伝」,中公文庫

このほど,ドナルド・キーン氏は,大震災のあとに日本に帰化した.名前は知っていたが,あまり詳しくは知らなかったキーン氏のことが気になっていたちょうどそのとき,書店に平積みにされているこの著書を見て,即購入した.
キーン氏はアメリカ人だったが,戦前から日本のことが好きで,戦時中は通訳として日本や日本人とのつながりを持っていた.日本の近代文学に名を連ねる多くの文学者との交流があって,京都とニューヨークを行き来する生活が長く続いた.
彼は,日本語が好き,日本人が好きなのである.決して,無理をして好きになったわけではない.
自分の人生を振り返ってみると,私の人生を左右してきたのは明らかに幸運であって,長い熟慮の末の決断ではなかった.(p.344)
これが本音である.若い頃,日本語と中国語の選択を余儀なくされたときもあったが,結局,彼は日本(語)を選んで前に進んだことが幸運だったと言っていると思われる.

今年で89歳になるキーン氏には,穏やかな余生を送っていただきたい.

0 件のコメント:

コメントを投稿