ギリシャ人である著者が日本に帰化して,小泉八雲となったことは私も知っていたが,彼の著作を読んだのは初めてである.本屋さんに平積みされていて,面白そうなので読んでみた.
この本は,1890年頃の日本の風景や建物,そして日本人,山陰の文化といったものへのものすごく深い愛情が描かれている.とかく,外国人に外部評価をもらって初めて自信を持つ日本人であるが,これを読むと,自分が日本人であることに,ものすごい自信が持てる.
いま,彼が生きていたとして,同じ事を言うかどうか,とても興味がある.というか,多分そうは言わないのではないだろうか.
昨今,日本に自信を取り戻すという,強い口調の政治家が多いが,自信が持てる日本が残っているのかどうか,一度検証してほしい.この本を読むと,どういうところがヨーロッパ人であったハーンにとってすばらしいと映ったのか,よくわかる.それは,心底人の良い,人間味あふれる日本人そのものだったような気がする.私が現在の日本にあるのかどうか疑問に感じるのはその点である.